バイヤーの敵を考えるバイヤー 第三回 品質保証




 私は、90年代のハイパー円高の少し後から、一貫してどこからかの海外調達に携わってきた。調達先は、先進国あり、新興国あり様々である。そんな私の動きは、関連部門の中でも品質保証部門との関係を太くした言ってよい。


 フェアーに見れば、外観、機能、寿命いずれをみても、日本製品に真っ向から対抗できる海外製品に出会うことはとっても稀だ。まして品質が職責のど真ん中にくる品質保証部門にしてみれば、海外からの調達を積極的に行おうとする私など、敵以外の何物でもないだろう。自分でも、中味もわからないくせして偉そうに〜と何度思ったことか、といった感じだ。そういう意味では、私のこれまでのバイヤー人生での最大の敵かもしれない。


 でもね〜成功した海外調達の影には、品質保証部門の大きな力が必ずある。理由はいろいろある。以外に中国のお酒とゴハンがおいしくて、退屈しなかった〜なんて理由もある。でも仕事さえしてくれれば、アフター5に何を食べようと、どこへ飲みに行こうと関係ない。私はそう思ってくれた品証担当者を「逃してなるものか」と、打ち合わせそっちのけで、おいしいレストランを探したりする。まぁ手段はどうでも、最終的に海外調達が実現すればいいや、と夕食のアレンジに奔走するのだ。これも夕食の調達と考えれば、立派なバイヤーの仕事♪なんてエクスキューズを持って、である。


 そんな風に自分がやってきた海外調達の中での品質保障部門との関係を考えると、一つ反省すべき点がある。以前、積極果敢にある中国メーカーの改善を行った際も、改善実現の影には、品質保証からの多大なバックアップがあった。そのバックアップは、関連する部門の係長が、たまたま同期入社だったという理屈を超えた人間関係があったのである。品証部門での大きな発言力と実行力を兼ね備えていた尊敬すべき同期が、まぁ俺の言うことならしょがないかぁ〜と、私の希望を聞き入れてくれたのである。そして、その係長を経由しない案件では、いろいろな調整が困難を極めた。なんでもかんでもあれもこれも同期のよしみに頼るわけにもいかず、困難を極めた場合は、その困難さへぶつかっていたわけだが、やはり進みは遅く、なんとか調整が功を奏しての実現!となっても、品証担当者のモチベーションが、ちょっと低いと感じざるをえなかったのだ。


 何を反省するのか?それは仕事が属人的で、海外調達の必要性をベースにした仕組みやルールでのせいせいとした業務フローへ昇華させることができなかった点である。その品質保証部門の係長がいなくなったら?私が異動したりしたら??そうなったらもしかすると、海外調達そのものが行われなくなる可能性がある。そんな事態を避ける仕組みやルールができていないのは、かなり反省をしなければならない点だ。


 これまで書いたことの背景には、円高になると「海外調達推進!」と大きな声で、そのメリットへの言及も浅いままに、闇雲に進められて、不具合品の山が海外サプライヤーから納入された苦い経験がある。海外からモノを買うというリスクの

大きなアクションを場当たりでやるべきでないとの典型だが、一回の過ちによって生まれた感情を簡単に変える事はできない。そんなことを教えてくれる品証部門との関係なのである。