「これしかできない!」と言い切るサプライヤーに魅力を感じるバイヤー



 「是非一回、話だけでも・・・・・・」

 

 あるサプライヤーからの売り込みの電話。ある御世話になった人からの紹介なので、あんまり「むげ」にもできない。普通なら、何らかの可能性を見出そうと会うのであるが、今回ばかりは・・・・・・自社でほとんど使用しない材料に特化した機械加工メーカーだったのだ。技術的に素晴らしいかどうか判断しても、今現在、そして将来も買う可能性が限りなく少ないサプライヤーと話をしてもなぁ〜なんて思ってしまう。


 もしかしたら・・・・・・そう、いつも万に一つの可能性にかけて、サプライヤーを探している。これは私がバイヤーである限り、未来永劫続けていく果てのない旅でもある。そう思っていても、今回はちょっとどうかな〜と思ってしまう。でも、その万に一つの可能性にかけて会ってみることにした。


 約束の時間きっかりに来社。私の勤務先がかなりへんぴなところにある為、ある程度時間には良い意味でルーズになっているつもりだが、こうやって時間通り来てくれると、やっぱりありがたい。自分の一日のスケジュールをリスケせずに済む。そしてまず会社の概要を聞く。そして会ったときから気になっていた質問をしてみる。


 「そのデカいカバンには、何が入っているのですか?」


 そのカバンには、数多くのサンプルが入っていた。車で動いているから苦になりません〜とは言っていたけど、ひと一人入ってしまうくらいの大きさ。すぐに自慢の製品を机の上に並べだした。机を傷つけないようにとマットも持参している。こんなところもとっても素晴らしい。


 サンプルを見て「これいくらですか?」と聞いてみる。教えてくれた価格はとっても魅力的だった。いろいろなサンプルについての質問を行っていると、あっという間に時間が過ぎていく。やっぱりモノを見ているのは楽しいなぁ〜でも残念ながら、その材質使っていないんですよ〜。


 「もしかしたら使うかもしれないし」


 そんな風に言われると、これまで一生懸命に説明してくれた事が相俟って、本当に申し訳なくなってしまう。言われてみれば、一般的な材質を避けて、やたらめったら高級な材料を使っているのは、私の方である。う〜ん勿体ない。


 以前のブログでも書いているが、多品種少量、短納期、低価格で、何でも引き受けます!みたいな売り口上には、正直なんの魅力も感じなくなっている。何でもできる〜って実際に見積依頼を行ってみると、私が今現在取引を行っているサプライヤーへ丸投げで見積を依頼されたり、まったく情報管理もあったものではないヒドイ対応をするところもある。売り文句の「多品種少量、短納期、低価格」ってのは、深く掘っていくと決して実現しないことが多い。だって、基本的に「多品種少量、短納期、低価格」ってのは同時には成立し得ないからだ。私はもう騙されない。

 

 だったら今回訪問を受けた「これしかできません!」なんて言う方が、よっぽど印象にも残るし、魅力的に映る。ここには具体的に書けないけれども、その道ではかなりレベルの高い加工を行っていることが、提示されたある数値から読み取ることができる。そういった本筋での確固たる「売り」があるからこそ魅力的なんだと思うけど。


 あ〜あ、なんか仕事ないかなぁ〜今現在発注できるモノがないだけに、やけに印象に残るサプライヤーとの面談でした。